ねこちゃんパップ/salco
ら、
「わしの美也子ちゃんに何をするか。あの匂いでないと筆が乗らないのだ
ぞ。それを銀座のホステスみたいにしおってからに。ああ、毛並の悪さを
ひた隠す厚化粧とお追笑を思わせるあざとい香料で、あどけない美也子ち
ゃんを染めるとは! 自然あるままを好まぬ俗物根性、余計な事しかせぬ
不届き者、汝の名は女。いや女ですらない、けだし糟糠とは名ばかりの粗
忽者、否、嫌がらせばかりの因業婆が」
と、憤激冷めやらぬ様子で机の周りを徘徊すること3日であったとい
う。
しかし文化勲章授賞者夫人として、今や井上八千代ばりに銀鼠の丹後ち
りめんをしゃっきり着こなす夫人も負けてはいない。
「あら。
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