ねこちゃんパップ/salco
るで頬杖でもつくようにねこちゃんパップに顎
を預けて飼い主を目で追うのである。やむにやまれぬ退屈と腹いせとの混
淆によってありとあらゆる布製品、革製品、木製品、合成樹脂を噛み砕き
引き裂いてしまうレトリーバーの桃吉くんにはやっぱり通用しなかったに
せよ。
しかしながらよんどころない諸事情によりペットを飼えぬ人間さんは、
鄙びたドテラ姿でねこちゃんパップを首に巻き、その尻尾を愛おしみつつ
今宵も百?先生の絶唱をひもとき涙にかき暮れるのだ。現存のさる謹厳な
大先生さえも、書斎探訪者に応接する時以外はねこちゃんパップを手放せ
ない由である。ゆくりなく脳を経巡る思索の一方で、やはり滞り
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