詩を読む5/地獄のペチカ
 
、でいる。それゆえ、「ぼく」は謝る。が、むしろ「ぼく」は努力している、と伝えようとしているほうが強い。誰に伝えようとしているのだろう。
 「ぼく」が見るものであり、「ぼく」を見るものだ。
 「変態」を決定するのも同じもの達だ。


 「僕」は女の肩に手を触れようとする。女は振り向かなかった。「私に触れないで」と女は言った。「僕」は立ち止まった。後ろから歩いてくる人にぶつかった。怪訝そうな顔で「僕」を見る。直ぐに視線をそらして歩き始めた。
 「僕」はポケットに手を入れる。渇きを感じる。何を欲しているのか。だが、女の声がする。「私に触れないで」と拒絶する声。もはやどんな声であったかも忘れて
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