金木犀と綿が舞うような/01
シャープペンシルで書かれた文字が並ぶ、少し煙草の匂いがするルーズリーフの切れ端。
雪虫の箱詰めが送られてくるそうだから、こっちは金木犀の花を送ることにした。
箱詰めにしたかったけれど、近所の家の庭の木からとってきたんだ。これで我慢してくれ。
僕は彼からの手紙に、一緒に入っていた金木犀の花をはさんで、封筒に戻した。
ドライフラワーとなった金木犀の花びらが、涙で濡れないように。
彼が金木犀の花に閉じ込めた、香りが、美しさが、時間が、溶けて何処かへと流れていかないように。
乾燥した金木犀も、手紙も、封筒も、煙草の匂いがする。
まるで君が此処にいるみたいだ。
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