金木犀と綿が舞うような/01
 
ていく煙草と、花びら。

 焦げる香り。煙草の香り。


 彼は煙草のような人だった、と思う。静かに赤く燃え、緩慢なようにみせかけて、実は他の誰よりも早く灰となり、燃え尽きた。赤も、灰も、真っ白い煙で隠して。こっそりと、独りで。
 けれど煙は、僕の肺へと入り込んでいて、灰になりつつある姿を、僕にみせていた。
 そしてその煙は僕の体内に溶け込み、血と一緒に流れている。現在も、きっと、これからも。


 焦げた香り。煙草の香り。
 君が花びらに閉じ込めた香りも、美しさも、時間も、想いも、
 白い煙になって、空へ飛んでいく。
 遠くへいってしまった君を、追いかけるように。

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