妖精/裕樹
は愛しそうにその塊を抱き上げて、まるで恋人にするかのように口付ける。
顔などないその塊が艶かしくうごめいた。
私は、それをじっと見ていた。
男は外套を脱ぎ、シャツを脱ぎ、全裸となってその塊を抱きしめる。
性交など出来るわけもないのに、ただ愛しそうに抱きしめ顔のないそこに口付けるばかりだ。
私はそれをじっと見ていた。
時折痙攣するかのようにうごめくその塊を見て、ああ、アレを妖精というのか、と思ったのだ。
そして目覚めたとき、夢か現実か解らない気分に包まれていた。
しばらくののち、男は行方知れずになった。
どこに行ったのかは解らないが、私は
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