妖精/裕樹
 
私は男のことも妖精のことも忘れてしまっていた。
 2ヶ月ほど過ぎたあたりだろうか。
 男から荷物が届いた。
 それは男が持っていた箱よりふた周りほど大きな箱だった。
 箱の中には箱が入っていた。
 男が抱えていた箱よりこれも当然大きく、そうして断然重かった。
 手紙が添えられていた。

「大きくなりすぎたので、もらってください」

 とだけ書いてあった。
 何を?
 箱を振り返り、私は思う。
 妖精。という文字が頭に浮かぶ。
 私は無意識で夢の中の男のように、そっと箱に手招きをした。

 かたり、と音を立ててその中に白い塊を見た気がした。



                          終
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