詩を読む5/地獄のペチカ
 
るだろう。「僕」以前の言葉が、「僕」を意味し価値付けをする。そして、死んだ後も、「僕」は消えてしまうが、言葉は消えない。
 「僕」が放つ言葉に意味はあるのだろうか。それらの意味の重圧のなかで、また違う「僕」が一つのシミへ向かっている。それをこの「僕」は知らない。言葉から意味がふっと消えていく。世界は無意味の表象で遊んでいる。「僕」はその反響する無意味の意味を一瞬だけ捕まえて喜んでいたのではないか。

14の頃より
狂えなくなった僕の手からは
何も生まれない
言葉に慰めはない
言葉に親しめない痛みすらない


 意味の重圧の中でそれを受け止めるには、一種の狂気が必要だった。
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