This Love Is Not Wrong/捨て彦
 

陽子さんはぐしゃぐしゃになったページを小さくボールにして、手のひらで遊んでいる。
「これ投げたらどこまで届く?」
堤防に座っている僕らの目の前は海だ。波の音がすぐ足下から聞こえる。陽子さんは堤防の上に立ち上がって、大きく振りかぶった。
「どこまで届く」
と言いながら投げたボールは、大きく弧を描いたけど、やっぱり紙だから飛距離は伸びなかった。そのままヘロヘロと減速して、1メートル先に力なく落ちた。
面白いね、と言って、陽子さんは僕の鞄を蹴った。鞄を海に落としそうになるのを必死で捕まえた。
「………この前さ、」
鞄を胸に抱きながら、僕は陽子さんに質問した。
「待ち合わせしたじゃん。図
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