夜の取引/番田
と客は口々に最近の不況についてを口にし、私はぼんやりとそれについてを考えながら咀嚼し、次の客先でその情報をアレンジして伝えた。彼らは商売をやめることを考えていなかったから、私は少しでも感情的に明るい方向に思えるような話しを展開する。しかし私と同じようなセールスマンは、巷にはよくいるもので、客は呆れたような顔をしてその話しを受け流すと言った流れに終止した。私は自社に戻るときの電車の窓に、そういった行為についてを思い浮かべ、自分の力ではどうにもならないような事実を噛みしめながら、けれどどうすることもできずに三角や四角をなした窓の外の風景を眺めていた。そこには音楽が流れていて、昔聞いたことのある色々な歌
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