夜の取引/番田 
 
社では、部長が私ににらみを効かせて、待っていることだろう。雑誌で見た話題を思いながら開いたドアの向こうに向かって足を繰り出していくと少し目眩がした。人の流れはあまりにも目まぐるしすぎた。違う車両に乗り移ると、子供がうじゃうじゃといたりして気が落ち着かなくなる。今月の販売目標が達成できるかを考えた。部長の掲げた金額は、景気にしては、果てしないほどの額で回りからは感嘆のため息がもれた。それを達成するには一日に1週間分の売り上げを上げながら引っ越したばかりの社内の整理と言った事務作業をせねばならず、それを思うと、まんざらそのため息も怠惰感がもたらしたものではないようにも思われた。


外を回ると客
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