中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
という事であった。此処は私の、二千四年の五月第二土曜日の世界。先輩が睡眠薬自殺する前日だ。其の事を思い出した瞬間、ふと左腕の腕時計の時刻を見て、あと少しで先輩が此の森へ、私に逢いにやって来る時間が刻々と近付いて来ている事で途轍もなく緊張していた。すると、畦道の向こうから、一人の女性の姿が現れて、やがて彼女が私の姿をはっきりと見据える事のできる距離まで近付いて来ると、彼女は少し小走りに成って、私の目の前で立ち止まり、微笑みを浮かべて私の顔を見上げた。
「貴方が先に此の森へやって来るなんて珍しい」
「今日の講義があまりにも退屈だったので、先輩より先に来ちゃいました」
私は十一年ぶりの再会の感動
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