中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
感動のあまり、号泣しそうに成ったが、涙が一筋溢れ流れる前に俯き、右手の親指で其れを強い力で拭い、其の体勢のまま、苦笑いした。
「一週間ぶりのはずなのに、何だか十何年も逢っていない気がするのは何でだろう? 其れに貴方、此の一週間でかなり大人びたような……」
「気のせいですよ、先輩」
「そうかなー」
先輩が少し困惑した表情を浮かべて唸って居る最中に、突然森の奥から、パイプオルガンが奏でる、悲しい旋律が流れて来た。
「ねぇ、森の奥から何か、パイプオルガンの音が聴こえて来ない?」
私は先輩から其の言葉を聴いた瞬間、一瞬にして血の気がひいた。もし、先輩があの白亜の巨城を見つけ、興味本位で其の
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