中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
色の朝日に満ち溢れた窓辺に立ち、外の景色を、王女が目覚めるまでずっと見つめて居た。野鳥や虫達の鳴き声が盛んに聞こえ、まるで映画に出て来る、太古の森を私に連想させた。
「お早う御座います」
 私が反射的にその声が聞こえて来た方向に体を向けると、ベッドの左端に、両足を下ろした、シルクのローブ姿の王女が居た。
「素敵な朝ですね。此処は、貴方様の、記憶の中の世界です」
 王女は微笑みを浮かべ、立ち上がると、私の傍の窓辺へやって来て、外の世界の景色を眺めた。
「此の世界は、貴方様の愛していらっしゃった女性が亡くなった日を、延々と繰り返して存在しています。恐らく、貴方様がその御方を此の世界で御救済し
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