中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
存在しなかった。つい先程まで涙を流して居た王女は、私がふと欠伸をし、私に眠気がやって来た事を知ると、彼女の寝室の窓際の壁の掛け時計に視線を移し、私に注意を呼び掛けた。
「あの時計の二つの針が12を越えると、此の城も、私も、此の世から姿を消してしまいます。そして、此の城に其の時刻まで残って居ると、貴方様も、私達と同じ様に、貴方様の記憶の中の、?存在すべき場所?へ引き摺り込まれ、其処から出る事ができなくなってしまうでしょう」
「私が私の記憶の中の、貴女方が?存在すべき場所?に、ですか? つまり、其れは具体的に、私は一体どうなってしまう事を言っているのでしょうか?」
「つまり貴方様は、此の城と私と
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