中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
場所?に、貴女と此の白亜の巨城は還って行くのですね?」
私が王女にそう訊ねると、彼女は途端に大きな瞳に涙を溜め、私に頷くと、小さな両手で小さな顔を覆い尽くし、泣き始めた。王女はいつまでもいつまでも泣き続けた。
「いつ、貴方様の前から、此の城と共に、私が消えてしまうのか、私自身には分からないのです。…ですから、貴方様に御逢いする事ができるのは、今日で再び終わりかもしれません…。そして、また此の森、いや、此の世に、此の城と共に私が姿を現すのは、いつなのか、全く分からないのです……」
王女の寝室は蝋燭を一本も灯していない為に、窓硝子で濾過された月の光以外、此の空間を覆う暗闇を貫くものは存在
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