中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
温かさを感じ取り、時間の観念を忘れた。

 それから毎週、土曜日になると、私は五年前と同じ様に、王女の居る、白亜の巨城を訪れた。と同時に、私の精神状態も回復し始め、やがて精神病院には通わなくてもよくなった。季節は夏から秋へと変わりつつあった。

 私の周りの友人達や知人達は、殆ど全て、結婚し、家庭を築いていた。私は彼等からよく、「結婚しないの?」と訊ねられる。そんな事を言われた夜、私は一人自宅でひどく落ち込み、激しく泣く。そして部屋の暗闇の中で瞼を閉じ、王女を脳裏に思い浮かべるのだ。どうしてひどく落ち込み、激しく泣くのかは私自身が一番良く知っていた。其れ等の理由とは、端的に言うと、?永遠と
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