中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
吻を交わし合った。

 私達は王女のベッドの上で激しく交わり合い、悲しいバロック音楽が彼女の寝室まで流れ終わり、夜風が窓硝子を震わせる頃にようやく互いの肉体から離れた。
「昼に唄は流れません。明日の扉が開かれる数時間ばかりだけ、永遠に終わる事の無い唄は此の世の哀愁に依って歌われ、夜と夜の隙間を漂う様に流れて逝くのです」
 王女は限り有る命を持つ、私の耳元でそう囁いた。
「何故、此の巨城と貴女は此の五年もの間、此の世界に姿を現さなかったのでしょう?」
「其れは、私が?存在すべき場所?に戻って居たからです」
「?存在すべき場所?とは?」
 私はそう訊き返す時に、自分の鼻の先端を、王女の
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