中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
は少し寒いくらいに感じた。動物達や虫達の鳴き声が絶えず聞こえて来る。
何十分程歩いただろうか、ある時突然、嘗て白亜の巨城が土曜日に存在していた方角から、悲しい旋律のバロック音楽が流れて来たのを耳にした。私は若しや、と思い、駆け足で其の方角へ向かうと、なんと其処には、五年前の五月中旬の土曜日に出現していた、白亜の巨城が立ち聳えていた。
私は唖然として、白亜の巨城を見上げた。間違いない、此の城は五年前の土曜日から忽然と姿を消した王女の巨城だ。私は胸の高鳴りを鎮めながら、白亜の巨城へ恐る恐る近付いた。名前の分からない鳥が鳴き声を発しながら、白亜の巨城の上空を横切って行った。
私は巨城
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