中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
一人だけであった。私は駅員に微笑みを浮かべて軽く会釈すると、プラットホームへ降り立った。
五年前のあの日から、白亜の巨城と共に、王女が完全に存在を消してしまった根源的な、若しくは間接的な理由や原因が私はどうしても知りたかった。しかし、其れ等に対して答えを私に与えてくれる他者は他に誰も存在しなかった。まるで長い悪夢をみている様であった。
駅を出ると、私は炎天下の下、曲がりくねった畦道を、ひたすら歩き続け、嘗て私が大学の先輩が自殺する前日に逢い、五年前まで、毎週土曜日になると出現していた、白亜の巨城の在った森の中へ入った。
森の中は様々な木々の葉に依って光と熱が遮断されている為、半袖では少
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