中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
し、私が貴女を忘れない限り、貴女は永遠に存在し続ける。人は、死んでしまうと肉体だけではなく、記憶までも失ってしまうのでしょうか?」
 私を正門の前まで送りに下りて来た王女に、私は訊ねた。
「記憶は貴方の心の一部と成ります。ですから、私という存在は永遠です」
「さようなら。御元気で。また来週、伺います」
「心を清く、正しくもって生きて下さい。貴方が過ちを犯せば、其の分だけ貴方の心は遠ざかり、貴方は多くの夜を過ごさなければなりません。清く正しい貴方自身の心を信じて、詩作と仕事に精を出して下さい。それでは御機嫌よう」
「さようなら」
「さようなら」
 私は王女に口づけし、別れの挨拶をし、正
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