中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
時に、ふと聞いたものだったんだ。母親も、そんな父親に昔から愛想を尽かしていて、大学時代の同級生、男性だったんだけど、その人によく夫から暴力を受けているとかの相談はしていたらしいよ。正式に離婚した後、その男性と母親は再婚した。その人もバツイチだったんだけどね。いくら慰謝料をもらったからといっても、経済的に苦しいかったのには変わりなかったから、僕は大学に入ってから幾つものバイトし、毎月、少しばかり母親に仕送りしてたよ。離婚してから再婚するまでの一年間だけだけど。僕は苦しくてそして憎くて堪らなかった。本当の父親という存在が。父親の実家は、君と同じ北海道なんだけど、今まで父方の祖母に色々親切にして貰ってた
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