中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
するようになった。『お前を育てた養育費を返すつもりで家を建ててくれないか』とかさ。奥さんには父親のことは話してなかったけど、僕と父親のやりとりを聞いているうちに、次第にどういう人間なのか分かってきたみたいだった。まだ幼くて人見知りのしない娘が、純粋な気持ちで父親の傍に近付いていくと、『俺の顔立ちにそっくりだな。特に?目?が』なんて笑う顔を見たら、胸の奥に憎悪の感情が再び湧き上がってきて、また父親の目を握り潰す妄想をしてしまった。その時の僕の表情は、きっと誰にも見せられない程、酷く醜いものだったと思うよ。父親は離婚前から、他に女を作っていて、半同棲状態だった。それは僕が高校生で父親が酔っぱらった時に
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