中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
いていたそれらは、ミクロぐらい、おそらくは顕微鏡で覗かなければ分からないくらい縮んで、脳裏に浮かんでいた。暗闇の空間が僕達二人を浮遊させているような感覚にさせた。僕達は完全な人間ではない。完全な人間になんて僕は会ったことがない。君は僕の中で理想的な人間だったけれど、決して君の本音を知った為に変わったのではなく、その容れ物自体が巨大化して、空虚な部分が露出して見えて、?君ですらまだまだ完全な人間ではない?と感じたのである。僕は沈黙が空に浮かぶ雲のように甘い綿菓子のように思えて、それが存在する目と鼻の先の場所の空気を吸うと空腹を感じなくなり(それは心の言い様のない虚しさと同じであった)、潤った瞳を君に
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