中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
いて来た時、僕は父親の事をあっさりと許してしまった。ああ、僕の憎しみとは心の傷の深さとはこんなにも浅いものだったんだ。なのに誰にも知られずにあんなに父親をネタにして切り売りしてしまった、と罪悪感に陥ってしまったよ。僕の暗示的なメッセージは、既に世間に浸透してしまっていて、もう取り返しのつかないところまで来てしまったと、今初めて他人に話して後悔したと思った。こんな話自体するべきではなかった」
君はライヴDVDのアンコール前にTVの電源を切り、何か落ち着かない様子で、溜め息を吐いた。僕は、僕の考え自体も浅はかで、君に対する嫉妬心も子供染みていたと後悔し、決してそれを悟られまいとした。先程まで抱いて
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