中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
心療内科へ連れられて行ったんだ。勿論その間も歌を作り続けていたけどね。今思い返せば希望のない暗い歌ばかりだったよ。父親は僕が小さかった頃から母親に暴力を振るっていてね、上の二人の姉はただ泣きっぱなしで、僕は何もできない姉達と泣くことさえできない僕自身に不甲斐なさを感じていて、その光景を鮮明に脳裏に焼き付けることしかできなかったよ。僕は昔から父親を許すことができなかった。だから、公務員で収入が安定している父を、いつか超えて見せようと野心を燃やしていた。その願いが神に届いて、後天的に、色んな才能を引き出してくれたのかもしれない。僕の自分の心の傷が─どれくらい深いものか自分では測りきれないけど─、変化し
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