中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
入れ、僕達は君のバンドのライブ映像を見ていた。空はさっきより少し明るくなったような気がした。
「君だけに初めて言うけど、大学を出てミュージシャンを目指す前は、実は僕は作家か画家になりたかったんだ。三人兄弟の末っ子の僕が二十歳になった時に、両親は離婚した。両親に対しての恨みを、歌として昇華させて表現する前に、絵か活字によってその想いを発散したいと思っていたんだ。僕にとって、両親の離婚とは、この世の全てであり、最も?不条理?なことだったんだ。予想もしなかった事態を受け止めることができず一時期、引き籠もりがちになり、精神が不安定な僕を心配した父親から退職金の一部だけ渡されて途方に暮れていた母親に、心療
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