中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
てきっとできないよ。父は評論家で、僕よりも社会のことや文芸作品のことを分かっているから。この状況で、小説一本でご飯を食べていく自信は全く無いよ。僕の気持ちは変えたくないけど、別の仕事をしながら作品を書いていこうと思う。その方がよっぽど現実的だろう?」
 僕は何故だか無意識に、自分の意志とは真逆の言葉を発していた。
 君は少し表情を曇らせて黙っていたが、やがて僕に語りかけ始めた。
「君に才能が無いなんて思わないよ。ただ、すぐにプロの小説家になれるとは断言できない。そこは君のお父さんと同感だな。だけど、僕はプロの小説家や評論家じゃないからはっきりしたことは言えないけど─これから社会に出て、色んな
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