中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
文が出せたの。お父さんだって、貴方にまるっきり才能が無いとは思ってないわ。だから、諦めずに、頑張りなさい」
 しかし僕の、小説に全てをかけるという思いは変わらなかった。

 夜中、珍しく君が先に文芸誌コーナーに来ていた。
「やあ。君の作品があれからどうなったのかと気になって、早めに来てみたんだ。調子はどうかな?」
 君は煙草のケースをポケットにしまい、肺から濃く白い煙を吐いた。
「新人賞に出すつもりだったけど、父親に、?お前には才能が無い?って言われて、推敲するのを止めたんだ。僕は院を卒業したら、普通に就職するつもりさ。才能が無い僕がいくら小説を書いたって、世の中に発表することなんてき
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