中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
 父親は文芸評論家だった。僕が書いた小説を父の書斎に持っていって見せると、数ページも読まずに、無表情で其れを床に投げ捨てられた。
「お前には才能が無い。駄目だ」
 僕は一瞬にして奈落の底に転落したような気持ちになり、喪失感を抱きながら、作品を素早く拾い上げた。
「失礼しました」
 僕は父の書斎から出、僕の事を心配していた母はリビングで僕を慰めた。
「学校を出てから働きながら少しずつ小説を書いていけばいいでしょう? お父さんだって、評論家になる前は、出版社で働いていたのよ。それでどうしても評論家になるのが諦めきれなかったから、大学院に入り直して、研究室に残って、教授になってからやっと論文が
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