中編小説 文芸誌ジョイントオーナーシップ・スペース 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
思い出すと、自然に両手が前に出て、プリント用紙の束を君に差し出した。すると君は人懐っこい優しい表情で僕の作品を受け取った。

 床に胡座を掻き、文芸誌コーナーの照明の下で、君は黙って黙々と僕の小説を読み始めた。僕は立ちながらドキドキしてその君の真剣な様子を眺めていた。
「どうしたんだい? 落ち着かないのかい? まあ落ち着いて座れよ」
 僕はやっとのことで床に座ったがやっぱり落ち着かなくて、姿勢を体育座りに変えたり、片足だけを伸ばしたり、胡座を掻いても両膝がガクガクして止まらなかった。君に読後どんな感想を言われるのか期待と不安が交錯しながら、グリップで止められたプリントの束を捲る音がこの広い
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