臨床詩作法 / ****'04/小野 一縷
銀色の波が運んでくる 季節の変更線は余りにも 細く薄い膜
揺らぎ
心臓を真鍮の鍵で 解剖される夢
胸が痛い
脈拍の波間に形成されず 零へと帰着する静寂は
計り知れない色合いの時間を 緻密に組織している
忘却された記憶と 消費 消去されてきた過去の入口で
油彩色の眩暈が水溶性の痙攣を 四肢に冷たく溶かし込んでいる
誰もいない 石造りの 冷えた回廊に
夕陽が音になって 毀れてゆく 静かに 少しずつ 積もってゆく
太陽の光の音の層 その表面に 臭覚を 漬け浸して
身体という範囲を嗅ぎ付けて 脱ぎ捨てる
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同 4:06 物質T 3mg
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