臨床詩作法 / ****'04/小野 一縷
 

手の平に触れる星は 冷たく掌を焼く

エーテルに濡れた人魚が 有毒な波打ち際に昏睡している

暗闇に永続して鳴る 雨音が氷結して 耳に痛い 星々が吹き突いてくる 
冷え切れた白い風が 柔らく冷たい地表を 蛇のように這ってゆく

赤い川の 静かな流れ 透明に浮かぶ壜の中 
羽根に 黒曜石の瞳を持つ 金色の蝶が瞬きしている

虫が鳴いている 季節の一つの終りへ 生命の一つの結末へ向けて 
冷たく黒い夜風を 羽根の間に吸い込んでは
一匹 また一匹 鳴き終える

冬と春の正確な中間に 吹く 吹雪に包まれる時
誰もいない 遠く ずっと遠くの海岸に 静かに打ち寄せる
銀色
[次のページ]
戻る   Point(3)