バックミラーに映る景色/仁惰国堕絵師
のを見逃すことのできなかった私は、質問したことを少し後悔した。
それでも運転手さんは話してくれた。
昔どんな仕事に従事し、どんな役職に就いていたのか。
どんな家に住んでいたのか、家族構成はどうなのか。
かつてどんな志を持って仕事に打ち込んでいたのか。
そして今はどういう状況なのか。
私は合点がいった。
そんな要職に就いていたのなら、人を惹きつける話術に長けているのも当然だ。
しかもその人となりは尊敬に値するものだし、その志は気高かった。
目的地に到着して車を降りようとしたとき、運転手さんは私にぽつりとこういった。
”今となっては、私は毎日バックミラーばかりを気に
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