バックミラーに映る景色/仁惰国堕絵師
はたまたこの不景気はいつまで続くか、いつ好転するかの予測まで、どこかの偉い人らしい乗客の会話と自身の過去の経験を照らし合わせて話してくれたりもした。
今の私にはそのどれももはやどうでもいい話だったが、その朗らかな人柄と勢いのある話し方で、不思議なことについついその話にのめり込んでいく。
その運転手さんは素人とは思えないほど話術に長けていた。
私はついついそのペースに引き込まれていったのだ。
”運転手さんはこの仕事の前にどんな仕事をしてたんですか?”
私がした何気ない質問に、運転手さんは一瞬口ごもった。
饒舌な運転手さんは、自分の話はどうも苦手らしい。
口ごもったのを
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