演劇の有用性について/salco
はおのれを救うことが可能なのか、というそれはアンチ
テーゼに他ならない。
父殺しを敢行し母を犯して尚、オイデュプスはおのれの目ん玉にアイスピックを突き立てずに済むのか、3歩先か30年先は自己処刑的暗黒なのではない
のか。
と、こうして我々の状況が文学の方法論をぐるりと回って(回り尽くして)、ギリシア悲劇まで立ち戻っている事実に気づかずにはいられないのだ。
哲学者も政治学者も匙を投げた、この父なしインセスト野郎の希死念慮に取り組めるのは、事実上アタマの狂った物理学者の夢想だけであって、この上
道を模索する手段が演劇という文芸手法の、容積の小さなチャンネルに残されてあるのか、というのも途方
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