演劇の有用性について/salco
 
の内実をも垣間見るのだろう。その幽明のあわいで何か神々しいものや、日常では決して嗅ぎたくない禍々しさにも
接するのだろう。古くは公開処刑や見世物小屋が提供してくれていた淫靡なくすぐりも期待する。セックスと袋叩きが祝賀典礼と並ぶ我々の愉悦であり、
現代は窃視視姦でささやかに代償していることも言わずと知れている。
また劇場での体験が何を及ぼし、どれ程の時間生き続けるかは個人によるので、決してメデューサの一瞥やトラフグの卵巣ではないという、この安堵も我
々観客には捨て難いところだ。
つまり舞台演劇が映像媒体と違うのは、限られた条件の中で、生身でヒマ潰し以上のものを観客に提供しなければならない責
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