ゆるやかな生活/豊島ケイトウ
判るのだが、今後も祐輔が家事を完璧に覚えることはないということを、わたしはよく知っている。だから、余計につらかった。
「背中、流してあげるー」
といいながら、祐輔が素っ裸で浴室に入ってきた。
いやよ、とわたしはタオルで胸を隠して抗議する。
「ぼくのこと嫌いなの?」
「違う。勝手に入ってきたことがいやなの」
「どうして? 前は毎日いっしょに入ってたじゃーん」
「今は、違うの」
「違わないよ。だってぼく、今でも亜季ちゃんのこと、だーいすきっ!」
わたしは思わず湯船に顔を沈めて涙をごまかす。
「亜季ちゃんはもう、がんばらなくても、いいからね」
祐輔が浴槽の縁越しに抱きついて
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