「檻の中の同性愛」/桐ヶ谷忍
 
た。
彼女の「好き」な女は、架空のキャラクターであり「私」ではないのだと
自嘲もした。
なのに彼女は、どういうわけか皆がだまされている中で私がひどく醒めた
人間である事を嗅ぎ取っていたらしい。
友達の中で同じように笑い転げた後、二人きりになるとふと問いただすのだ。
「本当はさっき何て思ってた?」

演じるという事は、ひどく消耗する。
「私」は外面に出さない。
その「私」を、彼女は問う。

繰り返される「好き」にほだされ、本音を問われ続けられ、少しずつ、
彼女の前でだけはボロが出た。
そうしてボロを出すほどに、彼女は私を好きだと言った。彼女以外の
友達
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