名探偵A/番田
屋の中に残されたものは、特に目につくようなものといえば彼の死体と、青いインクの染みだけなのである。しかしべちゃっと、唐突に何かによってぶちまけられたようにしてそれは、そこにあった。不用意にこぼされたものではないな、と私は思っていた。私は手帳を取り出して、スケッチしておいたそのいびつな形をぼんやりと眺めた。最近雇った、新人である、助手のピノコがばたばたと現像してきたばかりの写真を持ってきたので、それとスケッチをじっくりとつけ合わせる。
それはただのインクの染みにしては、とても不思議な染みだった。犬のような形をしているものもあるし、なんとなくペンギンや、キリンのように見えてくるものまである。
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