名探偵A/番田
る。文字のようなものは、なんとなくじっと見ていると文字ではあるが、単語、というところまでは読み取れなかった。
私は少しタバコを吹かしてその余韻に微笑むと、コーヒーを入れに、なんとなくキッチンに向かった。タバコは、マイルドセブンが今まで吸った中で、私は一番気に入っている。タールの量もちょうどいいし、倉庫に貯蔵しているキリマンジャロコーヒーの豆との相性も抜群である。
私はコーヒーを飲みながらそこでぼんやりすると、タバコの煙の中に、なんとなくじわっと犯人の面影がぼんやりと思い浮かんできた。煙の形は、昔父が作っていたような、円いドーナツ型をしていたり、それが曖昧になって少し壊れていたり
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)