絵本「猫たちの肖像画」/まどろむ海月
 
やはり世界一偉大だといわれた画家の手にするところとなりまし
た。その白いキャンバスに、失われたはずの激しい創作意欲をかきた
てられて、画家は不思議の感に打たれましたが、まだ彼には、どんな
絵が描かれるべきなのかはわかりませんでした。







 「世界一幸福な二人」と言いはやされていた王子と王女、しかし二
人はちっとも幸福なんかではありませんでした。いくら求め合っても、
与えあっているつもりでも、愛も幸福も、実感として深く感じられる
ものがまるでないのでした。
 そして文字通り愛の結晶とも言える子供は、不思議にも皮肉なこと
に二人の間にはどうしても生まれな
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