絵本「猫たちの肖像画」/まどろむ海月
 
れないのでした。誰が見ても仲むつま
じく幸福な夫婦でした。たがいに相手をやさしく気づかうことにおい
ても、人並み優れた二人でした。こうした二人に、例の猫がうやうや
しく献上されたとき、二人は思わず喜びの声をあげました。それほど
美しい魅惑的な猫だったのです。これこそ彼らが求めてやまなかった
もの、そのもののような気さえしました。
 美しい猫は、二人の子供のように、二人の愛情を一身に受けること
になりました。

 奇妙な生活が始まりました。これは二人にしかわからないことでし
たが、王子には王女よりも、王女には王子よりも、この猫の方を本当
に愛せるのではないかという気がしていた
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