絵本「猫たちの肖像画」/まどろむ海月
すっかり年をとった一人の画家が、一匹のシャム猫を飼っていまし
た。毛なみは美しいグレーで、目の色は緑色でしたが、青さの感じが
左右でいくらか違っていました。画家は猫を抱きあげるとその目を覗
き込むようにしては、誰に言うともなくこんなことをつぶやくのでし
た。

「いいかな、いちばん大切なのは富でも地位でもない。
愛じゃよ、わかっておるかの。
おまえさんの目はいつも深い湖水のようじゃて。
やっぱり左右でいくらか色が違うのう。
湖水の底に小さな明かりがちろちろ燃えている気がする。
これは焚火かな。
焚火に
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