絵本「猫たちの肖像画」/まどろむ海月
 
いたのです。やさしい二人は仲
むつまじく暮らしておりました。王子は王女に、愛しているよと言い
ました。なぜかそばにいる猫が笑ったような気がしました。王女は王
子に、私たちは世界一幸せねと言いました。すると猫が尾で?を作っ
たような気がしました。
 二人はいだき合いながら、心のどこかでため息をついているのでし
た。二人は激しくいだき合いながら、一匹の猫より孤独を感じていま
した。王女は夫の姿が見えないあいだ、猫を膝の上に抱きながら「愛
って何かしら。」とつぶやいてはため息をつきました。王子は妻の姿
が見えないあいだ、猫を膝の上に抱き「幸福ってなんだろう。」とつ
ぶやいては
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