絵本「猫たちの肖像画」/まどろむ海月
 
てはため息をつきました。

 深い霧がたちこめたある朝、王子と王女は庭で軽い食事をとってお
りました。

 王子が突然、音をたててナイフとフォークを皿の上に落しました。
彼は、自分たちこそ世界で一番みじめで不幸な存在ではないかという、
それまでの人生のすべてを根底から覆すような一瞬の激しい心の痛み
に貫かれ、小さな叫びをあげ、そのままこときれました。

 壮大で悲痛な葬儀のあと、王子の死の原因と心の秘密を知るものは、
聡明な王女だけでした。

 王女もまた、自分たちの不幸を嘆きみるみる衰弱して、わずか数週
間の後に命の炎を消しました。

 国中がかってない深い
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