ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
そろそろ荷物が届くはずだ、と。筆を持つ手が震えていた。まるでギターのリフをかち鳴らしているギタリストのように。農夫はその筆で署名するつもりだったのだ。……どうあしらえばいいのか? もうどう足掻いたって無駄なのか? そうだ。あいつに払わせよう。あいつに。あの腕相撲してて、窓から夜空を見上げていたあいつに。いや、あいつは金を持ってそうにないな……、虫だし。いったいどういう状態になるか農夫は思考をめぐらせる。重い荷物が運び込まれるだろう。運送屋のトラックが農家の前に停められて。縦幅1メートル、横幅3メートルほどのダンボールがくる、もちろん郵便受けには入るわけがない。窓からもれる光と、陽気な笑い声、この喧
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