チューズディ・サンダー/捨て彦
文字で「工場でお話しがあります」と書かれた文章は、素人童貞のおれにはとてつもなく眩しく映り、まんまとデーモンの策にかかってしまったのである。案の定おれはデーモンにボコボコにされた。鋭い爪で体中を引っ掻き回され、恐ろしい牙で幾度も噛み付かれた。瀕死で戦術的逃走を図っていたが、それは既に敗走の何ものでもなかった。火曜日までまだまだ時間があった。嗚呼、最早万策は尽きた。おれの命運もここまでか、出来ればもう少し生きたかったと胸の前で十字架を切ったとき、空や辺りが突然暗くなったのである。その瞬間ピピピと腕時計のアラームがなった。零時、火曜日である。まさかと思い辺りを見渡してみると、遠くに見える工場の屋根の上
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