ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
気兼ねする必要なんかないんだ……)
展望台まではさほど遠くなかった。近くまでくると上から石が落ちてきたが、僕は気にも留めず螺旋階段を上がった。展望台がぐにゃぐにゃと右に左に揺れているようで、倒壊するのではないかと不安だったけど、上にいくにつれ、螺旋階段が鉄でできていることへの安心感が増していった。それでも手すりの間から落ちないように注意を払い続けた。足取りがおぼつかなかったし、ぐるぐるのぼっていると軽い目眩がして、足を踏み外す危険があった。やっとのことで階段をのぼり終え、テラスに足を踏み入れると、すぐに女が僕を見た。彼女は髪を振り乱しながら近寄ってきて、言った。
「どう思う? ここから飛び降
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