ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
 
いる彼女を眺めていると、僕の意識が朦朧としていった。このままではどうせダメだった。だから賭けてみるしかなかった。わずかな、わずかな希望だったけど。僕は自分でも気づかないうちに立ち上がっていた。そして、吸い寄せられるように彼女の方へ歩きはじめた。僕は深淵に飛び込むつもりだったはずだ。でも、今は気分が変わってしまっていた。歩いていると、正気に戻ってきて、僕は、展望台の上に女性がいることで上ることを躊躇しもした。何か性犯罪的ないけないことのように思えた。だけど、
(のぼってもいいんだ。公園内のものすべてにのぼる権利があるんだ)と思いなおし、レンガ道を歩いた。(塔の上から何かを落としているような女に気兼
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